安全停止を怠ると体に負担がかかります

「すべてのダイビングでは安全停止をしなければならない」と思わなければなりません。安全停止とは、ダイビングを終了する前にしなければならないことです。具体的には、ボートに戻る場合、海底からボートにつながっているロープ(エントリー時に使用したロープ)をつたって海面に浮上しますが、海面から5mのところで3分間以上停止することを「安全停止」と呼びます。

ダイビング中は海水に溶け込んだ窒素が体内に吸収されます。窒素の量が体内で多くなるといわゆる「窒素酔い」というのが起こり、最悪の場合は死に至ることもあります。ですから、いったん安全停止を行い、体内にある余分な窒素を排出する役割がこの安全停止にあります。

地上にいると空気を感じることがありませんが、高所ではお菓子の袋は膨らむのをご存知でしょうか。それは高所では「気圧が低くなる」からです。つまり物体に対して空気が押す力が減るからです。地上でいるときの袋にかかる圧力(つまり押す力)は、高所では弱まるので逆に袋が膨らむのです。

これと同じことが海の中でも起こります。深く潜れば潜るほど水圧は大きくなります。従って、体への負担も知らず知らずのうちに大きくなるのです。当然水中に溶けている窒素も深いところでは小さくまとまっていますが、海面に上がれば上がるほどそのまとまった窒素は大きく膨らみます。つまり海面では水圧が低いからです。窒素は大きく膨らむと気化する働きがあります。気化した窒素は泡になり体内のあちこちで悪い働きをするようになります。そこで安全停止を行い、体内に残っている窒素を排出する必要があります。

ただ、エア切れや事故などで安全停止をしている余裕がない場合があります。その場合は安全停止をせずに急浮上しなければなりませんが、かなりリスクを伴います。

急浮上する場合は、左手を上にあげ、顔も上にあげた状態で「ア~」と叫びながら急浮上することで万が一の危険性を回避することができます。

安全停止のタイミングはインストラクターが伝えてれます。「ここで安全停止をしましょう」と合図をしてくれますし、3分間測ってくれていますので安心してください。

ただ、チームの人数が多いとインストラクターは全員の様子を見ておかなければならないので、できればダイブコンピュータを使用することが望ましいです。ダイブコンピュータは腕時計型で、しかも機能が満載です。自分が今水深何メートルのところにいるのかが分かりますし、また安全停止が始まったら自動で3分カウントしてくれます。それに、通常は海面から5mで安全停止ですが、海の中は波があるので、常に5mで停まっているわけではなく、4mの位置になったり、6mの位置になったりします。ダイブコンピュータはそれも計算して「あと何分安全停止が必要である」ということをタイマーで伝えてくれ、時間がくるとアラームでダイバーに知らせてくれます。さらに、体内窒素残量の目安も自動で計算してくれるのでよりダイバーを危険から守ってくれる働きがあります。